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リハビリ病院のスタッフとしては、母はまさかの回復ぶりで、担当チームのリーダーが言うに、「僕がこれまでにお世話させていただいた患者さんの中で一番回復した」んだそうだ。もちろん、入院当初に想像してた以上に。ということであるが。

しかしまだまだ心配事は多い。失語症、右側空間麻痺。母の体のことだけにとどまらず、母を自宅に一人きりにしておく時間、防犯についてもとても心配なのだ。

なので、母が勝手に自宅から外に出れないように鍵をつけることはできないかと、言われた。それって、閉じ込めるということか。もちろんできるはずもない。ケアマネさんもきっぱりと否定する。無理です。

母自身が自分の意志で出ていくのも困るが、誰か来た時(たとえ宅急便などでも)玄関を開けてしまうのも困る。
どう考えたって対処できないのだから。
しかし、玄関チャイムが鳴ったら、母はドアを開けてしまうのではないだろうか。

母にはよくよく言い聞かせるが、様子を見て、やはり心配が拭えない場合、玄関先まで行けないようにベビーゲートなどの設置も考えねばならなくなった。
こればかりは、暮らしてみないとわからない。

母が自宅で一人きりで過ごす間、万が一のことがあって、緊急連絡したい場合、母に携帯電話は操作できないし、とっくに解約しているので、ごくごく簡単でシンプルな電話機を購入して、自宅に固定電話をひいた。(もともとあったのだけど、使わないので電話機は接続してなかったのだ。)

ワンタッチダイヤルがABCの3件まで登録できて、なぜか電源アダプターが必要ない(どういうことかわからない!)ので配線もスッキリ。
問題は、母に使えるかどうかだが、もちろんそんなに簡単に使えるはずもなく、これから先、根気よく教えて練習していかねばならない。

そして、介護モニターを設置した。

インターネットを介するので、外出先でもネットにさえ繋がれば、モニターの様子を確認できる。つまり、外出先でもスマホで自宅の様子が生中継で見れるのだ。リビングのソファに座るお母さんの様子がばっちり!

別室で眠る赤ちゃんの様子とか、みんなが出かけた後の猫ちゃんやわんちゃんの様子とか、見守りが必要な老人の様子とか。防犯の抑止にもなるはずだ。そうか、こんな便利なものがあったのかと感動した。

画像もきれい。写真も動画も簡単に撮影できる。
動体検知機能がついてるので、動くと勝手に録画してくれる。
母を見守るために購入したが、他にも用途は多そうで、息子や猫ちゃんを撮影して喜んでいる。本当に買ってよかった。

他に、スロープの設置なども考えたが、おそらく大丈夫だろうということで様子を見ることにした。

家族が一人増えるって、大変だろうなぁと思う。
母も夫も息子も私も、早く、馴染めたらいいなぁ。
そして早く本当の家族になれますように。そう思う。

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いよいよ、母の退院を明日に控えて、皆がそれぞれ準備に追われた。

現在、母が入院しているリハビリ病院の担当チームのリーダーと、ケアマネージャー、今後お世話になるヘルパーさんの事業所の責任者、そして母の4人が、我が家に集合した。

病院の担当リーダーが、母の状態について、ケアマネージャーと事業所の責任者に引き継ぐ。

まず、話せないこと。話をしていても、本人が思うのと違う単語が出てきてしまい、けっきょく何を言いたいのか、わからないこと。そして、こちらの話が理解できないこと。雰囲気でわかったように頷いたりはするが、どこまで理解できているかは微妙であること。

そして、右側空間麻痺があること。右側は認識しないので、そちらから話しかけてもわからないし、何か物があってもわからない。床に物が散らかっていたとしても気が付かないので転んでしまう可能性が高いこと。万が一、外で右側から自転車や自動車が通り過ぎたりした場合、非常に危険であること。

一方、体の機能はずいぶんと回復し、トイレが自立できていること。時々、失敗はあるが本人が理解していて、洗面所で自分で下着を洗濯したりできるようになっているらしい。すごい。お風呂も、ほぼ自立できていて、見守りがあれば自宅で入れるだろうということ。日常生活のすべてがリハビリになるので、洗濯や掃除、食器洗いなどを積極的にやらせてほしいということ。

注意すべきは、母が一人で自宅にいる間の、室温と飲み物の管理。
暑いから、寒いからといって、エアコンを調整することはできない。
また、喉が渇いたからといって、自分で冷蔵庫から飲み物を出すことはできない。

室温については、こちらで温度設定してリモコンを隠していくくらいしか思いつかない。飲み物に関しても、テーブルに用意しておくくらいしかできない。

ケアマネージャーとヘルパーの事業所の方は何やらメモを取っていらしたが、
ようするに、「これくらいできるだろう」「大丈夫だろう」と、私が思わないことだな。そう思った。

「本人が慣れてきた頃にけがをするケースが多い」と言われたが、それは一緒に暮らすことを決めた私たちの方もそうなのだ。

介護保険を使って、デイサービスや、ショートステイや、ヘルパーさんなどを利用させてもらうけれど、それはあくまで補佐というか、補助というか、ヘルプというか、、、けっきょく私なのだ。

あまり気負ってばかりもいられないが、油断しないようにしなければ。
そういうことなのだろう。

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先日、母が入院しているリハビリ病院で最後のカンファレンスが行われた。
毎月1回行われる報告会のようなもので、医師をはじめ、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のリハビリ専門スタッフに、介護福祉士、相談員の方まで、ずらずらっと母を担当してくださっているチームのメンバーが十数名、テーブルを囲んで行われる。

24日に退院を控えての最後のカンファレンスだったので、退院後にお世話になる地域包括センターの担当者の方と、ケアマネさん、医療関係の担当者の3名が、わざわざ足を運んで来てくださっていた。

カンファレンスは13時からの予定で、私は病院には無事に到着したのだが、1歳8か月になる息子が初めてぎゃん泣きしてしまい、出席することができなかった。

カンファレンスで報告された内容自体は書類に目を通せば大体わかるようになっているのだが、最後のカンファレンスだったのでスタッフの方たちにもちゃんとお話しして挨拶したかった。それに、この日初めてお会いすることになったケアマネさんにも、ろくな挨拶ができず、本当に申し訳なかった。

昼寝時にぎゃん泣きして疲れた息子がくったりと腕の中で眠る中、カンファレンスを終えた母が私たちのもとに来てくれた。息子を起こさないように、小声でそーっと話す。

母は退院の日に迎えに来るのが、私と息子の二人だったら大変だろうに、どうするのかと、心配しているようだったが、夫も一緒に来ることを伝えると、ほっと一安心していた。小さい小さい孫に無理をかけさせているような気がして心苦しい。そんな感じだった。

自分が一番大変だろうに。
今日はたまたま虫の居所が悪かっただけなの。ごめんね。

いつも、頭の右側がもやがかかったみたいにぼーっとして、重たい。

外泊に来た時にそう言っていた。しんどいはずなのだ。当たり前だけど。
なのに、娘と孫に気を遣っている。

そーっとそーっと抱っこしてこの子を起こさないように、14時15分のバスに乗って帰れと。

うんうん。
私は言われた通り、そーっとそーっと息子を抱っこして、息子の頭を肩に乗せる。
オムツやおしりふきが入った大きなバッグを母が持って、お見送りしてくれた。

バスに乗った瞬間、息子が目を開いて、大泣きしたこともすっかり忘れてケロッと笑っておばぁちゃんに手を振った。ばいばい。おばぁちゃんも手を振る。ばいばい。

翌日、地域包括支援センターに出向いて改めて挨拶に伺い、この日の失態を詫びた。
担当者もケアマネさんも笑顔で許してくださり、カンファレンスの様子を話してくれた。

母は、思うことをそのまま言葉にすることができないし、相手の話す言葉も理解できないが、そのことをちゃんと理解していて、「私はあかんな、あかんな」と、言っていたそうだ。

母は想像もつかないくらい、信じられないほどに回復したけれど、本人にしてみれば、どれくらい歯がゆいことだろうか。
まだまだダメだと思っている。
もうじゅうぶんすぎるほどなのに。

もうすぐ一緒に暮らす。
どんなに想像力を働かせても、私には母の痛みはきっと一生わからないだろう。

そのことをちゃんと忘れないようにしなくちゃ。と、思った。

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